ライン

とくこの川柳集

表紙

お題 作品
降ろす 老いて母 肩の荷おろす 三回忌
降ろす 棚おろし するは名ばかり 不況風
残念 方言を 聞きたくて来た 旅なのに
残念 久し振り 友を見舞えば 誰と言う
ちぐはぐ すり鉢と そりが合わない 若い嫁
ちぐはぐ ちぐはぐも 気にならぬとは いよいよか
触れる 触れて見て 馬の優しさ 知りました
触れる ありがとう 手のぬくもりを ありがとう
  空仰ぎ 昭和を思う 草すべり
  次の世を 根っこに託す 蝉しぐれ
  崖っ淵 飛び降りなくて 今日米寿
そのまま そのままの 素顔がいいと プロポーズ
そのまま 里の家 昔そのまま 夢の中
遠出 遠出して 三途の川の 畔(ほとり)まで
シーツ 五月晴れ 朝寝のシーツ はがされる
いつまでも いつまでも くよくよせんと 水をまく
メイン 四世代 メインポールで まだ死ねぬ
ひたむき ひたむきの 愛いっぱいに 離乳食
嘆く 探索は もうしないでと かぐや姫
正しい お母さんに 箸の持ち方 教える児
ゆったり 渡り鳥 さえもうらやむ 千の風
ゆったり ゆったりと 便座に座る 至福時
茶柱に 空気の和む 四畳半
床柱 祖父の温もり 里帰り
ポイント ポイントが やっとたまれば 店はなし
ポイント 肩叩き ポイント母は ためていた
ぺこん ビードロが 初恋連れて きてくれた
  里に来て 今うらしまに なりました
  オリオンに 夫の在所 聞いてみる
  星月夜 返せぬままの 恩詫びる
  焼き芋を 隣の分も ひとつ乗せ
  ひと言の 詫びでほぐれた 嫁姑
  口べたの あっという間の 流れ星
カット 産み月に 自慢の髪を カットする
  飴持って 母いそいそと バスツアー
  弁当の 中にしのばす 母の愛
  わたしにも プライド有るの お母さん
  豪快な 父のあぶくは 生きている
  温暖が 過ぎると地球 白くなる
  居酒屋の 隅に見つけた 別世界
  絵手紙に 郷愁誘う 熟し柿
  虫めがね 蟻のおみこし 追っている
  知恵袋 底に明治の 声を聞く
  近代化 空から指示が 降ってくる
  郵便の 音聞きたくて 手紙書く
  苛立てば 苛立つほどに 進む針
  白杖に 園児がくれる 猫じゃらし
しっとり 洗い髪 しっとりとして 母恋し
  プップップッ ぼくのお尻に 起こされた
お月さま 早くおうちへ かぜひくよ
デビュー おムツ取れ おまる便座と ぼくみっつ
安い 鑑定を 受けて無口に なりました
  温暖化 孫を案じる 老夫婦
  キャンセルの からだ気遣う 弁当屋
  蛙の声 携帯に入れ 里みやげ
  青信号 アンパンマンも 歩き出す
  ありがとう 私幸せ ボランティア
  頼る人 あって嬉しい 家の鍵
参った 数珠繰りに 山道はるか 講参り
ラジオ 茶だんすの 上から昭和 始まった
しどろもどろ 泣きじゃくる しどろもどろを 抱きしめて
晩婚 晩婚の 相手はロボット にしよう
晩婚 ときめいて 晩婚も良し 八十路坂
おまけして 得を取ってる たこやき屋
あほ あほやなあ 味見もせんと タレかけて
あほ 大世帯 あほになる術 教えます
至れり尽くせり 逆らって 脳に刺激を 上げましょう
目立つ 白い杖 どうぞ通して 下さいな
血筋 祭り太鼓 聞けば祖先の 血が騒ぐ
血筋 たぬきかも 知れぬ時々 尻尾出る
他所 軒下に ええ塩梅の つるし柿
目障り ベランダに 今日もゆれてる バスタオル
暗い 暗い道 みみずも神も ごめんやす
臭う、匂う 衣装缶 猫もくしゃみの 衣替え
方言 胸熱く 方言の飛ぶ 里の駅
経本の 上で入れ歯が 昼寝する
手ぶら 父が来て 好きなん買いと 置いていく
下戸 下戸なのに 裸踊りで 盛り上げる
不貞寝 親も子も 不貞寝通じぬ 年となる
不貞寝 毎度だと 放っとかされて 風邪をひく
野次 うまい野次 弁論会を 盛り上げる
酷い 骨折の ポニー廃馬と 子に云うな
落ちる 落ちていた 恋を拾えば 破れてた
落ちる ゆずり葉が 二世誕生 待っている
うずみ火の 中にほっこり さつま芋
細い 割り勘で 別腹ほしい 細い食
ページ 疎開日記 ページの隅に 腹へった
  おみやげは 遠い異国の 滝の音
  ヨッコイショ 立てば一緒に 猫も降り
  じいじいの ひざを取り合う 孫と猫
  環状線 藤村と乗る 夏盛り
  うちわ風 昼寝の孫の 起きるまで
  添い寝する 母からもらう うちわ風
  もの忘れ しっかりせよと 我が頭
  ひざまくら いい気なもんだ 猫のタマ
  ふつふつと 卒寿の幸を 大吟醸
  口紅も そっとバッグに 卒寿会
センス パソコンが 選んでくれた 一張羅
失明の つらさ身にしむ 御飯時
落書き 貸出しの 本に落書き 消した跡
情け 忘れない 米一合の ありがたさ
独り言 独り言 聞かれたらしい ろばの耳
独り言 ストレスを 溶かす薬の 独り言
好き 好きな人 越して行く日の 雨模様
好き 大好きと 云われて弾む お小遣い
  宿題を 頼る人無し 姉嫁ぐ
  縄電車 遠い昔の 物語り
  追い付いて 母の苦労が 今わかる
わが侭 わがままを 叩くその手で 抱き締める
料理屋の 勘定書きに 妻無口
仁王 仁王下 詫びる声出ぬ 天邪久(あまのじゃく)
褒める 褒めている 母は悪さも 知っていた
褒める 捨て猫を 育てた犬を 褒めてやる
捨て犬の 鳴き声耳に 纏い付く
金魚 着はじめに 贈るゆかたは 金魚柄
  旬の味 集めて眠る 冷凍庫
  綱引きの 声一瞬で 空に消え
孝行の 積りで酒に 水を足す
誘い水 すればポンプに 命湧く
歯が抜けて 一年生の 顔になる
窓耿耿(こうこう) 保線工事の 夜を徹す
窓際の 隣の柿は 渋かった
眼鏡 色眼鏡 外して純な 心知る
本音 ネクタイを 外し本音の 丸い背な
記憶 記憶では 何時も子供を 背負ってた
餌漁る カラスと人の 知恵比べ
捨て猫に 餌を与えて 叱られる
吹く 干し柿が ええ塩梅に 粉を吹く
  老春の 旅にマニキュア つけてみる
  老友と ベンチで見せ合う 迷子札
同じ服 前の美人は 追い越せぬ
ドア ドアに掛ける 邪魔な飾りを ありがとう
折れる 紆余曲折 来た人生に 悔いはない
  平服を 信じ祝宴 恥をかく
渦を巻く かわいい指に 赤とんぼ
シャツ お揃いの シャツに幸せ はちきれる
咲く 盆休み 土産話に 花が咲く
咲く ひまわりが 二階の部屋を 覗き込む
  老いて母 自分に歌う 子守唄
  家出した 犬が尻っぽで ノックする
  パソコンの キーが脳裏に 渦を巻く
義理 母さんと 呼べずにごめん 義理の仲
義理 一椀の 義理に欠かさぬ 月参り
少年僧 彼岸終れば 野球帽
月参り 和尚と弾む 酒談義
触れる コスプレの 文化に触れる 映画村
  湯上りに たっぷりつける ヘチマ水
登山口 ひと息ついて トコロ天
好物の ニンニク控え いらっしゃい
味方 小姑を みんな味方に しています
埋み火の 中に嬉しい 友がいる
外す 台風が 外れ安堵の 義援金
演技 演技する 茶釜の尻尾が ありました
野心 金品の 山に野心の 芽が育つ
八十路すぎ 心に秘める いぶし銀
  ふるさとの 母の包みは チャンチャンコ
  金で買えぬ 熱い心の 友がいる
  掃除機と テレビ不調の 年の暮
  文通で 八十路に春を 呉れた子ら
  校庭に タイムカプセル 抱く桜
  リハビリの 足元照らす 十三夜
  心尽し 客が客呼ぶ 店となる
太らせた 箪笥の中身 リサイクル
  封切りの 新茶の香り 友と分け
  蝶が舞う お札も羽化し 飛んでいく
忘れる 忘れたら あかんと指に 巻くこより
忘れる 子に書かず 私に名札 付けておく
雨上がり 傘を畳んで 恋終わる
夏祭り 押し寿司嬉し 母恋し
高い 高い夜具 買って大の字 独り者
あぶく 海底の あぶくは母だ あたたかい
何よりの 倖せここに 水が有る
  右左 横断歩道 だけじゃない
いまいち いまいちを 笑顔でカバー しています
点字板 八十路の母に 添い寝する
いまいち いまいちと 言われ雑巾 掛け直す
  今度こそと 禁煙誓う 募金箱
  里帰り バイバイをして 熱いお茶
  豪快に 豆を撒きたい 年女
自由 自由にと 云われて尻尾 出てしまう
  保証人 義理には勝てず 印を押す
  茶とお菓子 何か足りない 一人者
ふるさとへ せめて感謝の 半返し
いそいそ 紅少し 付けて句会に 向かう母
  長生きを したいと思う 風呂上がり
  おさんぽの 園児がくれる 猫じゃらし
  爺ちゃんの 胡座仔猫に 貸してやる
  鍵開ける 手におばちゃんの 零余子飯(むかごめし)
  格子戸を 開けて燕の 通り道
  格言を 胸に三代 店に立つ
リズム 平成のリズムに乗れず 文語体
その時 終電車 その時駅に 父と母
狂う 温暖化 地球の自転 狂わせる
狂う 三毛がきて 家族の日課 狂わせる
怒り 落葉だき すら出来ぬのか 温暖化
水打って 友の来訪 ひたすらに
軽い 七回忌 過ぎて心も 軽くなり
老犬の 咳の背さする 幼い手
今更 今更と 云うがひかれる 美容法
後ろ 後追って 離れぬ犬と 二十年
若い 面接に 向かう若者 髪を切り
ふたり 大笑い 二人羽織の 意気合わず
近い 春風に 亀の目覚めも もう近い
読む 朗読の テープに小さい 犬の声
  三才児 真似てよいしょと 段登る
童話 一冊の 童話四代 読み継がれ
童話 愛し児へ 母手作りの 童話集
  連休に 行く宛も無く 草むしる
皮肉 皮肉屋の 肉に脂が 付き過ぎる
今もまだ 模造と知らず 磨いてる
  日向ぼこ 陽の温もりを 持ち帰る
ヘルパーの 力を借りて 春の中
あれ 家の鍵 あれから首に 掛けてます
あれ ロボットに あれと云ったら 酒が出た
  冷凍庫の 中で季節が 同居する
  片想い プラトニックと 痩せ我慢
言葉 旧友に 会えば言葉が 毬に成る
誘い 焼栗の 旗に誘われ 途中下車
  独り居の 受話器の向う 歌う友
人参を ぶらさげて馬 ひた走る
兎に角 年の暮 兎に角餅は 家で搗く
  皮算用 するで無い未だ 生きている
  風船の 糸はしっかり 掴んでる
  寝た振りを して聴く母の 子守唄
  霜冠り 人も野菜も 深み増す
  風邪引くな 転ぶなと子に 案じられ
惚け 夫も猫も 時々惚ける 癖がある
惚け 小指から そろそろ惚けて きたらしい
手紙 まぼろしの 友の手紙は 宝物
今日 陽光に 誘われ今日は 廻り道
あきらめ あきらめた 筈の二人が 花の下
  さよならの 扉は少し 開けておく
散歩 足踏みで 補っておく 万歩計
出産の 知らせ受話器に お辞儀する
  年金で 買った新茶の ほろ苦さ
一本気 一本気 猫になりたい 時もある
年寄り 老春の 紅茶のレモン 甘かった
夏休み なぞなぞ絵本 買って待つ
謎マーク 増えて夫の 反抗期
少年 家業継ぐ 少年父と 同じ汗
少年 少年の 夢膨らます 貯金箱
ふる里の 夕日が急かす 鬼ごっこ
プランターの 土黒々と 春野菜
ふるさとの 土の香嬉し とろろ汁
旅費 割引きの 旅の相手が 見つからず
税金 納税の 金にセンサー つけておく
  秋芳洞 時空に生きる ひと雫
潮騒を 枕の下に 伊勢の宿
案内 カーナビに 案内される 遍路みち
  表裏 無い友と頼られ 愚痴を聞く
薄い 薄っぺらい 紙が命を 持っていく
追う 追わないで 羽化した蝶に 夢がある
葉書 たどたどし 葉書嬉しい 誕生日
貯金 上にぎり 食べた積りで 貯金する
  まったりと 茶を二つ入れ 虹を待つ
用意 老犬に 優し布団を 用意する
仏壇 仏壇の 前で腕白 正座する
転ばぬ様 足底筋を 鍛えてる
貧乏 どん底で 掴んだ藁は 強かった
  冷蔵庫 冷える間も無い 夏休み
ゆとり ゆとり有る 心で叱る 反抗期
通知 内定の 通知に一家 湧き上る
ビール 鉄管ビール 五臓六腑に 染み渡る
ビール 返済を 終えてビールの 一気呑み
  工事音 粗品位で 治まらず
ソフト 気の和む ソフトカラーの 通院着
道草の 訳は四つ葉の クローバー
痩せる 痩せた蟻 花の筏に 救われる
デート 蛙のデート 庭の撒水 止められず
  アルバイトの 巫女はハワイで 挙式する
さざ波が ひたひた寄せる 首回り
ショック 家出した 猫が首輪を 替えてくる
恥じらいを 何処かに置いて 来たようだ
明日 おだやかな 明日を願って 手を合わす
スリル 吊り橋を 念仏唱え 渡り切る
熱帯夜 早く会いたい 里の風
風が売る 朝採り野菜 無人店
幻の 酒は値段を 聞いてから
  駅前に 佇むポスト 半世紀
負ける 負けて来た 猫に秋刀魚を 分けてやる
負ける 負けてやる 将棋も楽で ない子守り
  神経痛 我が足で有り 足で無し
酒好きは 名月出ても 出なくても
笑い声 絶えない家に 福の神
部屋 狭いけど 朝日一杯 受けている
ドラマ 朝ドラの 大阪弁が 懐かしい
  女でも 男でもよい 六人目
ダルマ 床の間の ダルマ ニートに 喝入れる
メール打つ その手にペンを 持たせたい
握手 握手して 互いに探る 胸の内
切る 冬空に 風切る凧も 子も消えて
メール 小姑を メル友にした 嫁の腕
惚れる 漬物に 惚れて通った お茶漬屋
決める 入学が 決まりへそくり 出してやる
猫舌で 割勘損な 鍋料理
バス 寄り道は 出来ぬバス停 ジョンが待つ
  古都巡り 足湯の駅で ひと休み
雨の日の 母は童話で 子を育て
バラ バラ抱いて 刺の痛さを 思い知る
リズム 八十路なお リズム狂わぬ 腹時計
買う 買い過ぎて 傷む蜜柑に 急かされる
  まかしとき 胸叩くのは 母ちゃんだ
丹波牛 たまには顔を 見せてくれ
  絶世の 花を咲かせた こぼれ種
列島の みんな待ってる 呱呱の声
  またたびの 好きなニャン太は 旅に出た
力作の 棚に花瓶は 乗せられぬ
  お化け役 客が帰って 怖くなり
  安かった 妻の口ぐせ 知っている
  親友と 云う名に暗示 かけられる

ライン

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